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「チャーハン王」 ―専門店の戦略の妙

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ITメディアでこんな記事が更新されていた。

http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1210/05/news105.html

 

チャーハン王」に取材をしに行こうとお店に連絡を入れてみたが、ネット反響で材料が無くなり早めに閉店したとのことだ。

 

まぁ予想通りだが、食べてからこれ書きたかったな・・・。

 

電話の応対が飲食店にありがちな雑な感じではなく、むしろ対外折衝慣れした物腰柔らかな雰囲気と理路整然とした説明の中にセールスポイントを織り込む様は、世の社会人たちがもっと見習うべきというレベルだったので、印象はとても良かった。

 

 経営者が元々リクルートや企業コンサルだったということで、7月にオーソドックスな戦略で出だしの好スタートを切ったというところであろう。

 

 ・オンリーワン商品で差別化を図る

 ・繁盛店の隣に出店しておこぼれをもらう

 ・地下店舗でコストを抑える

 ・市場の将来性まで見越した値決め

 

特に単純な料理(しかもチャーハンって残り物で作るイメージもある)の材料仕込みを徹底的に洗練し、提供される「他には真似できないチャーハン」は、ぜひとも食べてみたい。

 

特に安いわけでもないのにリピーターが多いので、相当美味しく癖になる味なのだろう。

 

私の経験上、中華料理屋のチャーハンよりも、タイ料理屋のチャーハンの方が圧倒的に美味しいと思っている。タイ米で作るチャーハンのパラパラ感と独特の香りが絶妙であり、どこのタイ料理屋でもハズレに当たったことはない。

 

個々の好みもあると思うが、中華の味付けでの期待値は下回らないのではないかと踏んでいる。

 

元リクルートということで培ったマーケティングの知識や経験を駆使して、話題性で売っている向きもあるのではないかという決め付けが一瞬脳裏をよぎったが、きっと「チャーハン王」は話題性だけで繁盛している訳ではないはずだ。

(それを確かめるためにも食べておきたかった・・・)

 

具材準備に3日かける手間ひまで、元々このチャーハンと同じものが提供されている「たんか」という福岡の焼肉屋では、サイドメニューながら大人気なんだそうな。

 

フェイスブックではまかないの写真が多数掲載されているが、「まかない王」も出店できそうなくらい美味しそうだ。

https://www.facebook.com/cyahanou.shinbashi

 

「ゴールドエッグ」を纏った「王様米」でチャーハンを提供する「チャーハン王」は、本気でチャーハン業界の王を狙っているかもしれない。

 

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経営戦略でも、東京進出のスタートとしては王道ともいえる。

 

新橋駅前のニュー新橋ビルで立地・案内時の知名度は抜群で、地下店舗とはいえ繁盛店の隣に出店というこれまた出店戦略としては王道を行っている。弱者が強者に寄生しておこぼれをもらう戦略として多くのビジネス書で紹介されているとおり、行列待ちができる人気店の隣に出店するのは賢いやり方だ。

 

もしドラ』の便乗本が多数出たように、ベストセラー本を批判する本、解説する本、同じテーマや切り口で書かれた本等の例がわかりやすいが、売れているものや店に便乗するのはちょっとずるいけれども戦略としては正しい。

 

また、飲食界隈で牛丼業界のような値下げ競争が起こっている一方で、ラーメン業界のような市場が成立している市場に着目し、それを目指しているという。

 

ラーメン業界のような市場というのは、「ラーメン800円、チャーシューメン1000円」というようなオリジナルのラーメンゆえに高めの価格設定をしているというアレのことだ。

 

なるほど、「チャーハン王」のチャーハン単品が700円、スープ付きで880円というのはまったくリーズナブルではない。ただ単にチャーハンを食べるだけなら、中華料理チェーンで400円台で食べられるし、もっと安い店もたくさんある。

 

だが、高いラーメン屋が繁盛している市場も、中華料理チェーンがもともと安い価格設定で店舗展開している背景の上に成り立っているから、チャーハンでも同じことはできるはずだと考えているのだろうし、私もそれは高い確率でできると考えている。

 

「チャーハン専門店」の市場を新たに生もう!という試みは、今後見守っていきたい挑戦である。

 

まずは1000円の「ハイボールセット」で新橋のサラリーマン・OLたちのファンを獲得して、ゆくゆくはうちの近所まで進出してきてほしい。

 

ただし、ラーメンの高価格は激戦区を構成することで成り立っている面もあるだろうから、新橋がなぜかチャーハン激戦区になり狭い商圏を形成するかもしれない。

 

今後どういう店舗展開を仕掛けてくるか、とても興味がある。

 

 【関連本】