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起業家が知っておくべき「大企業による新規参入者の潰し方」

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ランチェスターの法則

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商品開発の戦略においてはセオリーがある。

 

 A.中小企業は大企業と差別化を図った商品で攻める。

 B.大企業は中小企業が世に出した商品をコピーし市場に投入する。

 

Bは「同質化戦略」というもので、競合他社が新たな商品を世に出した際にすかさず、あるいはリサーチによりそれ以前に、同様の商品を市場に投入することをいう。これは商品に限らずサービスでも良い。

 

大企業、つまり業界をリードするリーダー企業といえども決して安泰ではない。写真フィルムの分野で世界的かつ圧倒的なリーダー企業であったコダックでさえ、写真のデジタル化にともなう時代の流れに乗れずについには経営破綻にまで至った。

 

世の中の変化を敏感に察知し、自らも変化していかなければ息の長い会社にはならないのである。だからこそ、強者であればあるほど、弱者の動向には神経質なまでに注視していく必要があるのだ。

 

大企業を存続させていくのは、いわば終わりなきモグラたたきのプレイヤーであり続けることでもある。

 

弱者は徹底的に差別化し磨いて尖らせた商品を武器に突っ走ることで、強者がそれを封じられないところまで走り抜かなければ生き残れない。つまり、強者が追いつけないところまで差別化を徹底すれば、新たな市場とシェアを獲得できるのである。

 

また、弱者である中小企業は資金、人材、インフラすべてにおいて数量的に不利である。だからこそ、何かをひとつ選択しそれを集中的に伸ばしていくことが大事だ。裏を返せば「何をやらないか」を決めることが重要なのである。

 

「何をやるか」を考えていくと、次から次へと手を広げる足し算になってしまい、結局大軍勢の前では戦う以前に戦力の維持が難しくなる。さらにその行き着く先は今の牛丼業界に見られるような価格競争であり、不毛な戦いの末に弱者は体力が持たずに潰えることになる。

 

だからこそ、「何をやらないか」を熟議し、確信と勝算のある独自の強みを伸ばしていくことが、弱者が生き残り、大企業に勝つ秘訣なのだ。

 

航空業界でLCC(格安航空会社)が伸びているのは、まさに「何をやらないか」を突き詰めた象徴的な例である。

 

外食チェーン「三光マーケティングフーズ」が展開する「東京チカラめし」は、牛丼に「焼き」の一手間を加えることで既存の牛丼チェーンとの差別化を図り、間に割って入り店舗を拡大しているが、ここ最近では吉野家が「焼牛肉丼」を、すき家が「豚かばやき丼」といった“焼きメニュー”で抑えにかかっている。松屋も近く「キムカル丼」など従来のものに加え、新たな“焼きメニュー”を投入する予定だ。

 

大企業であるマクドナルドはこの同質化戦略により、バーガーキングが日本に進出してきた際には、その半年前から「メガマック」を先に流行らせ対抗し、バーガーキングからシェアを奪われることに徹底抗戦した。

 

バーガーキングの主力商品である「ワッパー」の売りはそのビッグサイズのボリューム感だが、「ビッグサイズのハンバーガー」という差別化ポイントを見事に封じ込めたのである。

 

マクドナルドは「勝ち組なのに攻め続ける」とあらゆるところで言われているが、攻撃は最大の防御である。他の追随を許さない姿勢こそが、マクドナルドが外食トップに君臨し続ける所以だ。

 

また、撤退(方向転換)する決断力もなければ衰退の一途をたどることになる。

 

創業社長の藤田田は一代で全国4,000店舗を構えるまでに日本のマクドナルドを成長させた人物であり、ビジネス界では「価格破壊」でカリスマ的人気を誇ったが、のちにその価格設定で迷走し、かつ店舗拡大が裏目に出てサービスが低下した。

 

現CEO原田泳幸は2004年から日本マクドナルドのCEOに就任したが、1997年から7年連続売上マイナスが続いていた原因である「バリュー戦略」を見直し、本当の意味での「価値」と「価格」を基礎から立て直し、就任以降8年連続売上プラスを実現した。

 

商品価値による差別化は、大企業にも必要なのだ。同じ商品(=同じ価値)のものを高く売ったり安く売ったりするのは、差別化戦略としての長期的成功はありえない。

 

新たに起業を考えている人は、切り崩していく参入障壁たる強者・大企業の戦略分析にも目を向けていくと、より複眼的な視野で事業を考えていけるだろう。

 

 

M&A狙いで創業者利益をゲットする!

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大企業は、中小企業が行なっているサービスに対抗するだけでなく、企業ごと買収してしまったり、資本投入によりグループ企業にしてしまったりすることが多々ある。

 

ネットビジネス界隈で有名な家入一真が立ち上げた「ロリポップ」という個人向けレンタルサーバーのサービスは今も残っているが、その経営はほぼ家入の手から放れている。

 

家入は故郷福岡で妻の妊娠とそれに伴う入籍を機に勤めていた会社を辞め、イクメンしながら収入を得る手段として「マダメ企画」という合資会社を設立した。当時住んでいたワンルームで、出社せずに生計を立てるためだ。

 

そして、初期費用10万円、月額1万円のサーバーを借り、それを分割して又貸しするサービスを始めた。4,000円のDVDを1日400円でレンタルするような爆発的な収益モデルとまではいかなかったが、堅実に黒字を生んでいく事業を立ち上げたのだ。

 

それまでのレンタルサーバーは法人向けが主流でお堅い雰囲気のあるものだったが、現在のロリポップ( http://lolipop.jp/ )を見てもわかるとおりレンタルサーバーのイメージを一新した。

 

事業が軌道に乗ると、マダメ企画から事業を継承する形で「有限会社paperboy&co.」(以下「ペパボ」)を設立した。私も経験があるが、家入がかつて経験した「新聞奨学生」に由来する社名である。

 

新聞奨学生の経験者にしか伝わらないと思うが、新聞配達や集金、勧誘活動、生活サイクルと学業とを両立する生活を通して、良くも悪くも逆境に強くなる。世間から取り残されたような連中が、「世間様」の厳しさをまざまざと味わわされる場でもある。

 

そのままその事業を地道に続けていき、家族で静かに生きていくのも人生であっただろうが、従業員が増え責任も規模も大きくなった会社、取引先のサーバー会社が倒産したショックとリスクへの危機感、ペパボの成長に注目した大手ネットベンチャーからの資本提携オファー、さまざまな要因が重なり、オファーがあったうちの一社であるGMOインターネットと資本提携することになったのである。

 

GMOグループになったペパボは、ブログサービスの「JUGEM」や、今はなきSNSキヌガサ」などの他との差別化がハンパないサービスの立ち上げで話題になった。

 

家入は、当時史上最年少でジャスダック上場を果たした社長として時の人となったが、今はペパボの非常勤取締役である。事実上、買収されたようなものだ。実態としてのペパボはGMOの一部署である。

 

さまざまな媒体を通して浮き彫りになる家入の性格は、「起業はする(ビジネスの種を考える)のは好きだが、経営は好きじゃない」というものだ。芸人で言えば一発屋、もしくは一発ギャグを量産するタイプであり、長寿番組の司会をするような立ち位置には立つことはないだろう。

 

前述の例の他にも、電波の周波数帯を獲得するためにイー・アクセスを買収したソフトバンクのような例もある。

 

企業買収や合併は昔からあるが、特にIT業界ではリアルタイムで買収が行われる事例をたくさん見ることができる。プライベートでも仲の良い経営者同士で話がまとまる場合もあれば、強者の圧力で飲み込まれる場合もある。

 

弱者の観点からすると、買収されることを目的にサービスを立ち上げるというのもひとつの手だ。だが、そのためには大企業がマネできない差別化されたサービスである必要がある

 

とりあえず2つ。気が向いたらまた改めて書こうと思う。

 

 【関連本】

ランチェスターを知っていると、世の中の色々な動きが戦略的なものだと理解しやすい。このエントリで初めて知ったという人はぜひご一読を。ためになります。