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いろいろな「はてな」に触れるブログ

基本的には自分用メモの公開版です。オピニオンも書いていくかも。

井の中から虚像に牙を向ける者たち


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中国で起こった反日デモが過激さを増している。

報道では日本企業の店舗や工場が襲撃され、日本メーカーの車や製品が破壊の対象となっているそうな。

ネットで遠隔地から得られる情報はジグソーパズルのような断片をかき集めつなげていくことで、本来そこで起こっている事件を真実のものに近づけていく必要がある。もちろんそこには現地に行かなければ知り得ない情報も何ピースもあることだろう。


■デモの当事者は誰か

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中国でデモに参加している彼らにも同じことが言える。日本に来たことも無ければ、日本人に会ったこともない人が、このデモで破壊を繰り返しているのではないかと、私は分析している。

彼らはきっと、日本や日本人の虚像と戦っているのだ。

日常生活における中国国内の不満は限界近くまで高まっているという話はよく聞くところだ。中国当局が民衆のガス抜きとして制限をつけて暴動を起こさせることは珍しくないらしい。

中国では日本と似たような社会格差構造があり、生まれながらにして一定の階層が決まってしまう問題がある。

日本では税制の問題によって資産家の子は資産家であり、資産があることでより高等な教育を受けられる。一方の中国では、農業戸籍と非農業戸籍といった分別がなされており、非農業戸籍を持つ者は入試で優遇される等、日本と同様に制度によってある程度階層が決まってしまうのだ。

農業戸籍を持つ者は、非農業戸籍を持つ者への嫉妬を含んだ不満を抱えて生きている。日系企業で働いているのは中国国内でも階層の高い方であり、それが仮に日本ではない先進国の企業であっても、彼らは破壊や略奪の対象とするのかもしれない。

日系企業がその対象として選ばれたのは、歴史的な背景が大きく関わっていることは周知のとおりだ。国策として反日教育をし、国民共通の敵を作ることで国内を統治しようというのが中国という国である。

軍国主義時代の侵略と尖閣国有化をうやむやなままに結びつけて、階層の低い者たちを実質的に扇動しているのはまず中共と見て良いだろう。つまり、中国の中で日系企業を襲撃している彼らの中には「日本がまた侵略を始めた!」という危機感に駆られている者もきっと多くいることだと思われる。

中国という国は、古くから領土問題で周辺国と争ってきた。中国という国自体が何度も国家転覆しているから、国というよりも民族的な問題として考える方がさまざまな問題を考える上での整合性が取れる。

地理的な中国国土における人間の営みの歴史は4000年あるかもしれないが、中共が統治している歴史はまだまだ浅く若い国なのだ。日本のように政権が国民性を理解しきれていない部分もあるだろうし、ノウハウを構築できていない部分があることもまた否定できない事実であろう。

その国が13億4,000万の人口を抱え、莫大な規模の経済コントロールも考えなければいけず、それを中共が一党独裁で未熟な政権が統治するというのだから客観的に見てもいかに荷の重い仕事であるかが窺える。


中国共産党の権力闘争

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その中共の中でも派閥争いがあるのだ。決して一枚岩の政権ではない。

中共胡錦濤を国家主席として9名の常務委員で国を運営している。イメージとしては、9名で運営している零細企業が13億4,000万人のクレーマー顧客を相手に商売しているような感覚に近いかもしれない。

代表取締役である胡錦濤が社長職も務めているために発言力は最も強くあるものの、あくまでもいち取締役にすぎず、議決権の多数決で決まるため独裁で何でも決められるわけではない。

そして、その9名の常務委員を決める熾烈な派閥争いが、反日暴動と同時並行で展開されているのである。この常務委員の選定については完全に密室で行われるため、内情は知りえず、次の9つの椅子に誰が座るのかは蓋を開けてみなければわからない。

だが、その内情には「反日度」のようなものも関係している。裏を返せばそれが中国への「愛国心」となり、より反日活動の「実績」がある方が椅子に座れる可能性が高まるのだ。日本でも「民主党は中国や韓国に媚びを売るな!売国奴!」と批判される場面がありますが、中国ではそれが採点基準というか、一種の踏み絵のように扱われるのである。

裏を返せば、「反日」が錦の御旗であり、「愛国無罪」という免罪符にもなる、最強のカードとなるのである。日本人からしたらとんでもない話だが、これが中共政権の実態なのだ。反日でなければ失脚する可能性だっておおいに含んでいる。

つまり、尖閣諸島の所有権をめぐっての日本の動きを巧みに中国の内政問題に利用されたのが、今回の一連の問題の背景というわけだ。デモの中に一部の政治家を支持する横断幕が見られることや、扇動しているのが実は公安だったという諸々の報告からも、中共各々の派閥争いが裏で展開されていることを垣間見れる。


■日本がとるべき行動は何か

中国国内の低所得者による暴動を容認することで、上層部の出世レースの結果も決まってくる。中国各地で起こっている反日デモだが、起こっている地域=容認した地域の行政統治をしている中共党員はだいぶ遠いところだがそれでも少しは9つの席に近づけることになる。

また、デモに参加している彼らの教育水準や情報リテラシーは高いとはいえず、「官製デモ」と言われているとおり、行動は過激に見えるもののかなりの程度コントロールされた下であのデモは開始されたのだ。だが、最初の頃は「魚釣島尖閣)は中国のもの、蒼井そらは世界のもの」という横断幕でお祭り的に始まったデモが、いまではだいぶ過激なものに様変わりしている。

現在の中国のネット環境では、デモの情報は取得できるため、比較的平穏な官製デモに過激派が加わってきたこともまた一方の事実としてあるはずだ。戦時中に日本軍に殺されたその孫世代も「反日デモ」、「尖閣侵略」を聞きつけ加わってきていることだろう。普段は中共の弾圧が厳しく、行動を起こせない彼らが政府のお墨付きで暴動と略奪ができるこのチャンスでおおいに暴れることはむしろ自然なことである。

日本が警戒しないといけないのは、中共のコントロールがきかないレベルにまで暴動が拡大してしまうことだ。日本政府はここを警戒して中共上層部と秘密裏に話しあっていかなければならない。着地点を決めずに今回のデモが始まったとは思いたくないが、落としどころを見失う危険性についてもあらかじめ想定しておくべきである。

また、「中国を侵略しようとしている日本」という虚像に対して、日本で「反中デモ」なんて起こせば実態のないところに煙を立てさらに火に油を注ぎ大火事になってしまう可能性もありうる。日本人の品位は東日本大震災が報じられた海外でも賞賛の対象となっているが、真正面から対抗して抗議の声を上げることでその品位を落とさないことが大事だと考える。

特に情報リテラシーが低い人にはより断片的な反日を煽る情報が、彼らの手の届くところに撒かれているのだから、その燃料となることがわかっててあえて投下する必要性などどこにもないのだ。むしろ理性的な階層とのパイプを強化しておくことに注力すべきだ。

情報というのはすべて発信者のバイアスがかかっているものだ。大手・個人を問わずメディアの報道もまた同様にバイアスがかかっていて、人間の手で管理している以上完全に中立公正な情報発信をすることなど不可能である。また番組の編成上時間的制約がある中では、ものごとをすべての角度から報道できない面も当然ある。

だが、「石原が悪い!」、「いいや、野田が悪い!」という議論が割と広範囲に広がって展開されていることは、あまりにも短絡的でお粗末な話だ。

まぁ一つのトリガーとなったことは実際のところであるし、かといって賃貸契約も切れたただの私有地をめぐって仮に有事となった場合、いろいろと手続きを踏んで対処しなければいけなくなるから国有化しようという話だったのだろう。地権者が高齢で相続がからむ可能性もありややこしい事情もあったようだ。明確に施政権を確立しておいた方が都合が良いため、中国が内政に集中しなければいけないタイミングで一気に国有化を固めた部分は評価して良い。

タイミングが悪いといえば悪かったし、良かったといえば良かったのだ。ずっと問題を棚上げにし続けず終止符を打ちにいった点ではGJである。


■今後は日米中の動向に注目

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交渉ごとが相手を理解することで有利に進められるように、外交においても先方の国民性を理解することで駆け引きをコントロールしやすくなる。特に政権の歴史は浅いとはいえ中国という国は交渉の場数を踏んできた民族で構成されている。尖閣の領有権の主張はいわばアドバンテージを握らんがための「ふっかけ」であり、漁船・漁船監視船の派遣もその一環である。

これが尖閣諸島を奪いに来た行為なのか、単なるパフォーマンスなのか、誰の息がかかった者たちが船に乗っているのか、彼らの真の要求は何なのか、それと突き合わせて冷静に対処していくことが大事だ。漁船に乗っているのが過激派のテロリストならおそろしいことだが、これだけの規模で大挙して押し寄せる行為を中共が許すはずがないだろう。

そして中共はアメリカの顔色もうかがいながら、暴力的な行為は国内にとどめるはずだ。領有権を主張するだけで具体的な軍事攻撃を仕掛けなければアメリカが手を出す理由がないからである。

相手を知り、双方の最大の利益を鑑みて、平和的な妥協点をしっかり提示し交渉していくべきである。

(追記)
オバマ大統領が尖閣問題は日米安保条約の範疇だと表明した。これにより、中共は国内で事態を収束させて今回の騒動は終了するのではないか。もしかしたら中共の意向を汲んでの3国首脳による大芝居だったのではないかとさえ思える展開だが、有事に向かう雰囲気を予行演習できたことは各人にとって良い経験だっただろう。


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