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「これからの『正義』の話をしよう」


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「今さら・・・!?w」と思ったそこのアナタ、申し訳ありません。

文庫版が出てたのでアマゾンでポチったのが一昨日の話なのです。

一昨年は立ち読みで済ませてしまったんですね。
1,500円くらいだったら買ったんですけど、サーセンwwww

んで、早速届いたのでマックでキンキンに冷えたコーヒーを飲みながらパラパラっと再読。
ってことで、今さらだが正義の話をしようじゃまいか!

もはや本書についての説明は不要だと思いますけど、

■幸福最大化(功利主義
■自由の尊重(自由至上主義)
■美徳の涵養

の理念を中心に「正義」に関する問題を展開している「政治哲学」の本です。

「幸福の最大化」というのは、「効率の最大化」を前提にあらゆる決定をしようというもので、「個人の権利」は必ずしも優先されるわけではありません。言い換えると、100人が犠牲になるならば、1人の犠牲はやむをえない、もっと言ってしまえば1人を犠牲にして100人を救った方が「正義」だ、という考え方、思想です。

これを「功利主義」といいます。

第二次世界大戦では、地上戦に突入する前に原爆が投下され終戦交渉が始まりましたが、地上戦に突入していたらもっと犠牲者がたくさん出ていた(アメリカ人、日本人、さらに世界戦争の被害者全体として)であろうという観点から「原爆投下は正しい」とする考え方も、ある意味功利主義です。

義務教育では「原爆投下は悪そのものでアメリカは許さない」と教わりましたが(教諭によるバイアスもかかっていたと思いますが・・・)、もし当時の日本が戦争の終わらせ方を知らなかったのだとすると、それは肯定されるべき選択だったかもしれません。

要するに数の論理なのですが、倫理的な問題をかなり含んでいます。

例えば、学級で1人がいじめにあっていたとして、その子だけがいじめにあっているおかげで他の人が安心して学校生活を送れる、というのは、他の思想を持つ人たちにとっては倫理的にかなり問題なわけです。

何に正当性を置くか、ってことですね。

功利主義っていう言葉がなかなか飲み込めない人は、「合理的主義」みたいに思っとけばだいたい合ってますw
(「合理主義」っていう概念は別の意味で存在してますので、あくまで覚えるためにね!)

次に、「自由の尊重」についてです。

「個人の自由」を尊重する考え方で、「リバタリアニズム」や「自由至上主義」と呼ばれます。

人間の自由を第一とし、制約のない市場を支持して規制はするべきでない、という考え方、思想です。

経済や政治だけでなく、過保護(=自由を奪うこと)をよしとせず、同意の上での売春や同性愛を肯定し、税による所得の再配分を否定しています。

これは根底に「自己所有権」という概念があり、「個人の権利」が最大限尊重されます。

ちなみによく誤解されるというか難解に思われがちなのが

■「リベラリズム(リベラル)」と「リバタリアニズムリバタリアン)」の違い

です。

響きが似てて、とてもわかりにくいですw

リベラリズム」は経済においては共産主義や社会主義といったいわゆる左翼的な思想であり、福祉や税による再配分に重きを置いた経済的平等を目指す思想です。「個人の自由」や「政治的な自由度」を重んじる反面、「経済活動の自由」に異を唱える思想です。

誰かたくさんお金を稼ぐ人がいたら、「その稼いだお金は連綿と構築されてきた社会基盤がベースにあるおかげで稼げたお金だから、個人が稼いだお金は社会(全体)に還元してしかるべきだ!」というのがリベラリズムであり、それを唱えるのがリベラルです。

また、経済的にリベラリズムと思想が一致しつつも、政治的な面で「個ではなくコミュニティ」にベースをおくのが「コミュニタリアニズム」です。

日本に戦争責任をいまだに要求しているアカい国や、それに応じる思想もこれと一緒で、戦争の当事者を対象にしているのではなく、日本国という社会やコミュニティに対して要求をしているのです。

一方の「リバタリアニズム」(=自由至上主義)は、強制力を持つ税は私有財産権の侵害であると考え(困っている人や弱者は、助けたい人がその自発的な意思で助ければ良いという考え)、税金で福祉を行うべきではないという立場です。そういうのは寄付でいいじゃん、という考え方ですね。

つまり、小さな政府を目指す考え方で、経済政策においては自由な市場の方が政府が管理する経済よりも効率的であると判断します。

個人の自由においても、「他人の迷惑にならない範囲内で好き勝手に生きてもいいじゃん!だから干渉するな!」という解釈でおkです。そこには「自己責任」ということもセットでついてきます。だから本人の意思を無視して課される税金はけしからん!」となるわけです。

先ほどリベラリズムで触れた戦争責任についても、リバタリアニズムにおいては戦争の当事者が責任を負えばそれでいいという発想になるわけで、コミュニティを対象にするのか個人を対象にするのかというベースについては、リバラリアニズムとリベラリズムは一致します。

「個人の自由」や「政治的自由」と「経済活動の自由」をともに重んじるのがリバタリアニズムであり、この思想の持ち主を「リバタリアン」といいます。

また、「保守・右翼」と「リバタリアニズム」は、「経済の自由」を重んじる点では一致していますが、「個人の自由」や「政治的な自由」においては対立しています。

まとめると、こんな感じです。


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本書では、様々な功利主義やリバタリア二ズム、リベラリズムの例を出しながらそれらを批判しています。もともとサンデルはリベラリズムを唱えたロールズを批判して有名になった政治哲学者ですしおすし。

そんで、つまるところサンデルの立場は「コミュニタリアニズム」(=共同体主義)ということのようです。人は何らかのコミュニティに属し、コミュニティと個人は切っても切り離せないものであると言っています。

この手の哲学の話は、性善説とか性悪説っていう話にも及んでとりとめなくなりそうな感じなので、ここで終わりますw

サンデルの主義主張はどうあれ(ハッキリとこれこそ絶対だ!っていう感じはなく、本人も歴然たる確証を得ていない印象がありました)、上記の図にあるさまざまな考え方をおおざっぱに理解するにはなかなか良い教科書だと思います。

ハーバード大学で最大の履修者を誇るほど人気のある政治哲学の講義というのは、コミュニタリアンである彼の思想に共感しているからではなく、単純に講義がわかりやすくおもしろいからではないでしょうか?

というか、アメリカ人って「正義」の話が単純に好きなだけかもしれませんがwww

本書はなかなかに読みやすかったです。
(この際、これを立ち読みで済ませた理由にしてしまおうw)

この本で触れている設問を自分で解いてみると、自分が何主義なのかがわかったりもしますよ(。・∀・)ノ


安い文庫版がオススメ!