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第46回衆議院議員総選挙の自民党圧勝という結果に思うこと

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民主党ツートップの鳩山・菅コンビによる“オウンゴール”で衆院選勝利をおさめた自民党。野田がロスタイム残り10秒でセンターラインからロングシュートを放ち歓声がわくものの時すでに遅し・・・。

 

 2005年衆院選:自民党296議席

 2009年衆院選:民主党308議席

 2012年衆院選:自民党294議席 New!

 

民主党惨敗!自民圧勝!という結果だった。

 

私はとりあえず石原慎太郎が耳タコで言ってきた「複式簿記・発生主義」の導入で財政の根幹からの改革を期待し、比例は維新に入れた。

 

ちなみに選挙区は東京1区だが、自民党オールスターズの最終日の応援演説もあってか自民の山田みきが海江田との接戦を制し小選挙区で当選した。そして海江田は毎度の比例復活当選。小選挙区では山田みきには投票しなかったのだが、支持・不支持にかかわらず“地元の代表”は山田みきに決まったので、任期中は応援し働きかけていこうと思う。

 

選挙は、要は「何に税金を使わず、何に税金を使うか」を選択するということだ。政治家や政党を介する間接民主制で各党は政策をパッケージで売り出すから、自分が望む社会や考え方と完全に一致する投票対象はまず見当たらないだろう。

 

米国のように2大政党で2択であれば例えば「共和党のこの政策を一番支持してるから、共和党のこっちの政策は支持しないけど目をつぶるか」と、山ほどある政策の不一致があったとしても選択しやすい。投票する側はある意味ワン・イシューで投票先を決定してしまっても良い。

 

日本のように「あれもやります!これもやります!」とボリュームのあるマニフェストだのアジェンダだのを掲げると、政治への参加のハードルが上がるというか、めんどくさくなってくる。

 

背景には複雑な諸問題が国内に山積しているためだが、それを複雑なまま政策に反映してしまっている理由のひとつはブレーンに学者を据えているからだ。私は、有権者向けのプレスは実際には複雑なものであっても本質をしぼり簡略に伝えることこそ政治に必要なことだと考えていて、またそれを政治に望んでいる。

 

投票率は史上最低の59.32%無効票率は過去最高の3.31%(204万票)だったが、党の乱立とそれにともなう政策の不明瞭さから投票先を決めきれなかった有権者が多かったことの現れだろう。政局への呆れもあったと思うし、何より民主党を捨て駒とした自民党の軌道修正としての“儀式”的な意味の選挙というのが実際のところで、原発やTPPはハッキリ言って争点でもなんでもなかったのだ。

 

もっとも国民が関心のあるのは景気対策であり、景気回復のための有効政策を基軸に政党を消去法で消していくと、見事に議席を増やした自民と維新とみんなが残る。

 

その根底には、結局官僚に対してリーダーシップを発揮できる人材は自民にしかいない、もしくは維新(=石原・橋下)、というメッセージが選挙結果に如実に現れている。現職大臣が8名落選、地元で圧倒的人気のあった元首相が首の皮一枚で比例復活という結果はあまりにもわかりやすい。

 

将棋は駒の能力や自軍の総力が確定しているから采配しやすい。野球も自軍の戦力をしっかり把握していればある程度セオリーどおりに采配すれば監督は務まる。ところが一国の政治となるとトップが自国の諸々すべてを把握することは不可能だし、大臣として専門知識やマネジメント能力に長けた人材に乏しい民主党には政権担当能力は無く、国政など到底できっこなかったことがこれでもかと言う程証明された。

 

とにもかくにも、東北復興を迅速に進めなければいけない。そのためにはねじれ国会解消を、という意味もあって自民へ票が集まった向きもあり、もし自民がコケたらもう日本はおしまいだろう。

 

心配なのはあれもこれもと広げすぎた政権公約で、盤石な政権と国民へのリーダーシップを考えるなら「あれはしないで、その代わりにこれはする」のうち「あれはしない」を明記した方が良かったように思う。リーダーシップの要諦は「決断力」と「発信力」だ。やらないこと、できないことをハッキリ言うことが大事。民主党の惨敗の背景には、3年3ヵ月の間に実現できた政策のアピールが弱かったこともある。橋下のようにトップ自ら発信するもよし、うまく電波や紙面に載らなければマスコミに顔の聞く人材に耳打ちして間接的に発信するでもよしだ。

 

さらにリーダーシップが発揮されていると「影響力」が強まる。安倍の金融緩和発言で株価が上がった時点で、選挙結果はある程度堅い予測ができた。

 

財源が限られている以上「できないこと」を事前に明言しておくことで後々の政権維持にも効果が出る。今回そこに踏み込む勇気が足りなかったせいで、次の参院選の頃には「ま、まぁ民主党よりはひどくないよね・・・」というニュアンスで、どちらかというとマイナスな印象を残す形になっていそうだ。自民党内では、とりあえず目の前の選挙を取りにいった格好だったのだろうか?

 

いずれにしても期待値が高いほど失望への振れ幅も大きい。

 

自民圧勝という結果は小選挙区制の制度設計ゆえのものであり、得票率で言えば実は圧勝とは言いがたいのが実情だ。次の総選挙では今回付け焼刃で臨まざるをえなかった第三極の躍進、あるいは政界大再編となる可能性も十分秘めている。

 

今回の選挙では日本未来の党も議席を大きく減らした。未来=小沢派、つまり民主党が政権を獲得した選挙で民主党の顔になっていた鳩山、菅、そして小沢がひきずり下ろされた格好だ。鳩山は政界引退、菅は比例復活、小沢は未来の小選挙区立候補者全体の1勝70敗のうちの1勝という結果だった。

(小沢の政治家としての生命力は並々ならぬものがあるw)

 

国民の関心が原発に重きがおかれなかったという面はごくわずかで、小沢も民主党からも国家権力からもいじめられ抜いた挙句、国民から見ても戦犯扱いなのだ。小沢は15選を果たしたとはいえ、のらりくらりとカメレオンのように時流に色を合わせて生き抜いてきた政治センスに陰りが見えてきたようにも思える。

 

とりあえず有権者も政治家も身を持って感じた一番のことは、政党政治の難しさではないだろうか。そして、その難しい取り組みに対して自民は強い。得票率が伸びなくても、実態より大きな勝ち方ができるプロの政治家集団なのである。さらには政党乱立で混乱した政局でしっかり漁夫の利を獲得する時局の読みにも長けている。

 

 

 参考:菅直人民主党の立て直し』 http://amba.to/Wh1oie

 

現行の選挙制度では連立の組み合わせは多少変化するものの自民政権は当面続くだろう。民主党の惨敗の原因は、ないがしろになったマニフェスト、それに関連した党の分裂、そしてブレまくったリーダーシップ無きリーダーの姿である。

 

橋下はブレていると指摘される機会も少なくないが、地方首長の観点から国のあり方を改善するという主張には一切のブレはなく、発信力についてはツイッターを駆使して示している。

 

商売の世界でもそうだが、固定客だけで成立している商圏を確保していてもいつかは限界がくるものである。政治の世界も同じで、強固な支持を得ていてもその他大多数の無党派層を、商売で言えば“衝動買い”する新規の顧客層を獲得しなければ競合に負けてしまうのだ。

 

橋下は、あるいは小泉純一郎は、そのフワフワした層を上手に取り込んだ。投票所に足を運ばせ、投票したくなる衝動に駆らせる。それは争点を単純化して障壁を取り除き衝動を突き動かすエモーショナルな訴求をしたのだ。

 

私は今回の選挙は「善と悪」の対比が出たことが自民党の圧勝につながったと考えている。領土を強奪せんとする外敵である中国・韓国、行政の効率化・円滑化を阻害している霞ヶ関、国民との約束を破った詐欺政党、これらに対する毅然とした姿勢を示した自民や維新、みんなに票が集まった結果となったのだ。

 

それにプラスして、政党が乱立し各党の特長がよくわからないけど民主はダメだから自民、あるいは大阪での改革実行力をテレビでもよく取り上げているから維新、という投票心理が働いたのである。選挙期間中に北朝鮮のミサイルが日本国土上空を飛び、共産、社民が後退した部分も大きかっただろう。

 

「ダメだから変えてほしい」

 

つまり改革実行力。この期待に応えられる政党や候補者に票は集まる。私が維新に一票を入れたのもそのためだ。

 

他方、有権者の深層心理には、「過去に悪とされた自民党の族議員は、実は政策実行には必要な存在だったのではないか」という思いも少なからず民主党のかみ合わない「政治主導」の体たらくを見ていてあったのではないか。大切なのは政治家と官僚の適度な距離感であり、官僚といきすぎた関係に陥った自民党が下野して膿が抜けたところを見計らって、政権に返り咲かせたという向きもあったはずだ。 

 

さらに労働者レベルでは、目下の生活において最も重要な「雇用の維持」、つまり会社の倒産を免れるために「電力の安定供給」は重要であった。石原が電気料金の引き上げに関する過去の事例を挙げて「アルミ業界が壊滅した」という話を再三していたが、あれが実はけっこう心に響いたという労働者は多かったのではないかと思う。倒産とまではいかずとも、電力経費がかさめば人件費を削られ減給していくのは自明だ。

 

非正規であれば切られる可能性が上がるわけで、現実問題として賃金や生活の危機感から電力業界の味方である自民に票を入れた人もいるだろう。「脱原発」や「卒原発」などという夢を目指すよりも、目の前の生計が最重要なのである。

 

政治で夢を語ることは悪いことではない。だが、その夢が実現しなかった時、今回のように政党が崩壊することになる。

 

大衆の価値観を推し量れる政治家でなければ、代々伝わる地盤はゆるぎ、看板は吹き飛ばされ、カバンの中はすっからかんになっていく時代なのだろう。

 

さようなら、真紀子さん。

 

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一票の格差、次世代の政治参加と合わせて知識を深めたい。